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【勉強用まとめ】第3回 改めて、HCD(人間中心設計)とは?

 

HCDって何?手法?考え方?

HCDとは人間中心設計(human centered design)の略称です。ここでいう「人間」は、製品・サービスを使う人のことであり、人類が一番偉いとか言っているわけではありません。

また、HCDは作り手側の開発への「取り組み方」を言い表したものです。その取り組み方はその名の通り、製品やサービスを使う人を常に優先的(中心的)に考え、企画・設計・開発・デザインを行うやり方です。

 

使う人を優先しないことってある?

最近はものづくりをする際、こう言ったことを考えるのは当然のことになってきました。ただ、HCDの考え方は20世紀中頃から確立してきたものです。そのころは多くが、技術的に作りやすいもの、生産コストが少しでも安くなることを優先して製品を作っていました。そうして、できた製品が使いにくければ、使う人がそれに慣れれば良い、と考えていたのです。

そういう考えも1つの考え方です。しかし、ヒューマンエラーが起こりやすい。よって、「使う人を優先する」人間中心の考え方が広まりました。

 

HCDのプロセス

HCDはサイクルのプロセスで進めていきます。下の画像のように1〜4をめぐるようになっています。ただこのHCDサイクルは、評価をした際に必ずしも1から始める必要はありません。もしも、ユーザーの把握ができてなかったと思うなら1から修正すればいいし、ユーザーのして欲っしていることが違うと感じたなら2から修正すればいいでしょう。どこから直すかは、ユーザーを優先させることを軸に、どこを直す必要があるのか考えることが大事です。

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HCDサイクル

 

 

HCD実践の際の原則

しっかり、HCDを実践する際の原則として下記の6つが決められています。

ISO 9241-210

  1. ユーザーやタスク、環境を明確に理解し、設計する
  2. 設計から開発全体を通して、ユーザーの視点を取り入れる
  3. 設計がユーザー中心の評価により判断・実施され、修正される
  4. プロセスは反復的である
  5. 設計はユーザーエクスペリエンスの全体に焦点を当てる
  6. 設計チームは学術的で多様な視点とスキルを取り込む

順にどういうことか説明していきます。

1. ユーザーやタスク、環境を明確に理解し、設計する

ユーザーとは製品やサービスを使う全ての人のことです。製品やサービスを使う人を優先して企画・設計・開発・デザインを行う「HCD」では、ユーザーを判断基準として考えていきます。そのため出来るだけ具体的に事細かく、開発する人たち全員がユーザーを思い浮かべられるようになる必要があります。

例えば、新しく「エクササイズをサポートする」アプリを開発することになったとします。その場合、どんなユーザーがどんな時にどんな状況で、「エクササイズアプリ」を使うのかを調査する必要があります。それを知ることで、設計している製品・サービスが調査したユーザーが本当に必要としているか、使ってくれるかを判断します。

 

2. 設計から開発全体を通して、ユーザーの視点を取り入れる

ユーザーの視点を取り入れると言っても、開発チームにユーザーを入れなければいけない訳ではありません。ただ、どれだけユーザーについて把握し開発したとしても、やはりユーザーに直接確認できた方がよいのです。

 

3. 設計がユーザー中心の評価により判断・実施され、修正される

2 のようにユーザーに参加してもらえない場合も現実にはあります。その場合においても、あくまで 1 を実践し、ユーザーの立場で評価することが必要です。この評価をすることで、設計している製品やサービスがユーザーの欲しいものとズレることを避けられます。

 

4. プロセスは反復的である

「プロセスを繰り返す」ことが原則になっているということは、繰り返す前提の開発スケジュール・ 3 で発見するズレを修正していくこと、それが重要だと言っているのでしょう。

 

5. 設計はユーザーエクスペリエンス(以下、UX)の全体に焦点を当てる

HCDのプロセスを適用する目的は、ユーザーに合った良いUXを実現するためです。UXを説明しますと、ユーザーが製品・サービスを利用する際に経験すること全てのことです。例えば「車」の場合、買う前から、買って乗ってる最中、乗った後までの一連の流れが「体験」です。そこまでを考えて設計する必要があります。

 

6. 設計チームは学術的で多様な視点とスキルを取り込む

 これはチームメンバーの構成について言及しています。ユーザーのことを第一に考えられるのが理想ですが、技術的な問題やビジネスの都合が優先されてしまうことが多いそうです(確かにそういう場面は何度か見ました)。そのため、UXの質を落とさないよう、その手の専門家が必要です。またHCDの実現には、ユーザーの理解をし、それを全ての工程で評価の軸とするため、工程に関わる人全員が始めからチームに関わることも重要です。

 

まとめ

HCDはものづくりの際の哲学であり、方法論でもあります。ただHCDで大切なことは原則・プロセスがどうのこうの、というよりは「技術中心ではなく、人間中心のものづくりの考え方こそ大切」という哲学の部分だと感じます。原則に関しては、1度改定していますし。そして、ユーザビリティもUXもその根幹には、ユーザーを優先させて考えるという「HCD」の哲学があるのは間違いありません。つまり、HCDは新しいものづくりの時代のテーマであり、ユーザビリティもUXもデザイン思考もそのテーマを実現させるための一種の考え方である、と言えるのではないか。

 

 

(参考:UXデザインの教科書/安藤昌也 , 人間中心設計入門/山崎和彦・松原幸行・竹内公啓)

 

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ユーザビリティ は「製品自体の品質を良くし、ユーザーの目標を確実に正確に達成させる」ことを目的とします。

対してUXは「製品自体の品質を良くし、目標を達成させるのは当然だけど、それよりもユーザーに良い体験をさせる」ことを目的としています。

つまり、ユーザビリティ は製品の質でユーザーのタスク処理を、UXはユーザーの感情を重視する考え方だということでしょう。良いUXを実現する要素の一つに、良いユーザビリティ (品質)があると思います。よって、HCDを実現するにはどちらも大切です。